年明け

「お、年が明けたみたいだね……あけましておめでとう」
「なんや、うるさいなぁ……」

カウントダウンイベントが始まったらしく、窓の向こうから大きな音が聴こえてくる。
あたたかい部屋の中でうとうとと微睡んでいた土岐は断続的に耳に入ってくる大きな音に顔を顰めた。

「去年東金ともっと近くで聴いたんだろ?」
「“たち”と、な……それにあの時のメインは小日向ちゃんやし」

背中越しに榊の表情を伺う。……まだ納得していない様子に見える……。
土岐は気づかれないようにふぅ、とちいさいため息をついてから、そっと微笑みを浮かべた。

「いつのまにそんな嫉妬深なってしもたんやろ……困った人やわ」
「このくらい格好悪い方が君は安心するだろ?」

…………。
なんと言ったらいいかわからず、黙り込む。
そうやね、と微笑むのも、馬鹿にするなと怒るのも、違う気がして、黙ってしまった。
ふと、千秋とふたりがかりで小日向を神戸に来いとさんざん口説いて困らせていたのを思い出す。
小日向も、きっとこんな風に困惑していたのだろう。

「……あけましておめでとう」
「ごまかされた」

言いながら、じっとこちらを見つめている気配がする。ごまかさせてくれないらしいようだ。
まるで返答を急かすように、ドン、ドン、と花火の音が聴こえる。
芹沢から聞いた話では、1500発の花火が上がるのだったかーー

「今年はどれくらい格好悪いとこ見られるやろ。楽しみやわ」
「あれ……薮蛇だったかな」

余裕のない、格好悪いところがどれだけ見えたって、安心より先に、困ってしまう。
愛されているという安心よりも、真っすぐな感情に触れると、どうしていいかわからなくなってしまう。
しんどいことばっかりやな――と、苦い笑みを浮かべる。

「あんまり格好悪いばっかりやと愛想尽かしてまうかもしれんけど」
「じゃあカッコイイところも見せてバランス取るよ」

背中越しに榊が楽しそうに笑う。
ーーそうそう、笑うてる方がええ――と胸の内で頷きながら、土岐も笑みを零した。